看護師の中には、亡くなった患者に着替えや化粧を行う、エンゼルケアの意味を理解していない人も少なくありません。エンゼルケアの主な目的は、故人の尊厳、家族のケア、感染症の予防の3つです。
故人の体を清拭し、着替えや化粧を施す作業は、生前に近い表情や外見にすることで、故人の尊厳を守ります。そのため、拭き残しや化粧崩れなどに注意して、作業を行わなくてはいけません。
また、残された家族の多くは、故人を綺麗な状態であの世に送りたいと考えています。看護師が行うエンゼルケアは、前述した故人の尊厳を守るだけでなく、遺族の気持ちを納得させることにも繋がるのです。
そのほか、生前のような状態に戻すことは、大切な人を亡くした悲しみを和らげる効果もあるといわれています。
人間の体は、心肺機能が停止すると徐々に腐敗などの変化が起きていき、体が感染源となって周囲の人達の体に悪影響を及ぼすケースも珍しくありません。感染リスクは時間が経過するほど高くなるため、火葬を行うまで状態を維持できるよう、防腐処理を行う必要があります。
遺族の中には、看護師がエンゼルケアを行う前に故人を思うあまり、体に付着した血液や体液を無意識に拭ってしまう人も多いです。血液や体液は、直接遺体に触れる以上に感染のリスクが高いので、注意を促しましょう。事前にしっかりと説明を行い、安全が確保されるまでは接触させないよう、目を配らせておくことが大切です。